2022/09/12 08:30
トライアングルエヒメ広報事務局
みなさんこんにちは。トライアングルエヒメ広報事務局です。 県内を実装フィールドとして地域課題を解決する、愛媛県デジタル実装加速化プロジェクトが遂に動き出しました。まずは採択事業者の事業内容について、ご紹介します。
日本一のシマアジ養殖生産量を誇る愛媛県宇和島市で、持続可能な養殖経営を目指すプロジェクトがスタートする。
実装するのはAIを搭載したスマート給餌機。魚の行動をモニタリングし、給餌量を調整してくれるAI給餌でコスト削減、環境負荷低減、省力化の実現へ。
デジタル技術で水産業の課題解決に挑む。
こまめな養殖管理が必要なことから、優れた養殖技術を有する宇和海の小規模生産者に適した魚種であるシマアジ。
現在、県内のシマアジ養殖は南予地区(宇和海沿岸)のみで行われており、その生産量は国内出荷量の50%近くを占める(令和2年漁業養殖生産統計年報、愛媛農林水産統計年報より)。
近年生産量は増加しているものの、魚価が維持されている有望な魚種でもあるためシマアジ養殖を行う養殖業者は多いが、彼らが抱える大きな課題がある。それは無駄餌。
現在、シマアジ養殖においてはタイマー式給餌機を使い、配合飼料を給餌しているが、シマアジは食欲にムラがあるため、食べずに海底に落ちる無駄餌の多さに養殖業者は頭を悩ませてきた。
無駄餌が多いことは余剰経費が掛かるだけでなく、海底に餌が沈むことによる環境負荷や、適正な給餌ができていない可能性も考えられる。
その解決策として持ち上がったのが、AIを活用したスマート給餌機だ。
給餌機に搭載した超音波センサーが魚群の状態をキャッチ。
餌を食べ始めると上層に集まり、満腹になると下層に沈んでいくというシマアジの行動から食欲具合を判断し、適正なタイミング・量の給餌を行ってくれる。
実装する給餌機は、超音波センサーで正確に魚群を観察できる インターネット自動給餌システム「餌ロボ」
従来のタイマー式の難点を解消する画期的なシステムだが、一方でイニシャルコストがタイマー式の約5倍かかるというデメリットも。
さらにシマアジ養殖におけるAI給餌機の導入事例がまだ少ないため、普及させるにはタイマー式との比較検証を行い、その実力を評価する必要がある。
養殖業者が個人的に実証するには負担が大きいため、今回の実装化において愛媛県漁業協同組合をリーダーとする産官学のコンソーシアムが結成された。
メンバーは、愛媛県漁業協同組合うわうみ支所 戸島事業所、養殖業者、給餌機メーカーのパシフィックソフトウエア開発株式会社、愛媛大学大学院農学研究科、宇和島市水産課。
AI学習機能と給餌制御ソフトウエアにより、 各漁業者の飼育ノウハウに合わせた給餌が可能に
AI給餌機を活用することで、養殖業者は生産性の向上、漁協はAI給餌機の普及によるスマート養殖の横展開、メーカーは実証データを活かした製品開発・改良、愛媛大学は研究成果をもとに養殖管理の適正化の研究を推進…と、それぞれの目標に向けて連携を図りながら取り組みを進めていく。
本プロジェクトの実装フィールドに選ばれたのは、宇和島市の市街地から約18kmの宇和海に浮かぶ戸島。面積2.41㎢、人口279人(令和2年国税調査より)の小さな島だ。足摺宇和海国立公園内に位置し、リアス海岸で水深が深く、黒潮由来の暖かい海域であるためシマアジやブリなどの養殖が盛ん。
実装対象は、戸島の養殖業者2名。彼らの養殖生簀において、給餌機以外の条件を同様にしてAI給餌機、タイマー式給餌機それぞれで養殖を行い、効果を比較検証する。今年10月頃よりAI給餌機の実装を開始し、定期的にデータを測定・分析。養殖現場でシマアジに適した学習データや設定をブラッシュアップしながら検証を続ける。
無駄餌を減らすことが環境を守ることにもつながる
AI給餌機を導入したことによる効果測定は、給餌量の推移など現場目線での評価に加え、ストレス軽減効果の検証も行われる。
水中画像の解析、血液・組織サンプルの解析など科学的手法を用いた評価だ。
本プロジェクトでは2ヶ月おきにサンプリング・分析を行い、今後の方向性を検討・改良を加えていく。
稚魚から出荷まで、シマアジの養殖には2年強かかるため、2025年までの長期ロードマップとなる。
現在、宇和海でシマアジ養殖に取り組む養殖業者は約65経営体おり、生簀台数は約400台。
本プロジェクトが成功すれば、戸島から宇和島、そして宇和海全域へAI給餌機の普及が進み、さらなる養殖の効率化が期待できる。
「今後は環境を守ることが私たちの重要な課題。長く養殖が続けられるように、持続可能な養殖経営を目指していきたい」と、養殖業者として参加する和家紀彦さん。戸島から宇和海全域へ。次世代型スマート養殖への挑戦がはじまる。
トライアングルエヒメ広報事務局
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